研究紹介

多くの生物はエネルギーを作ったり、外界の情報を得るために、光を利用し自身の生存に役立てています。その中で中心的な役割を果たすのが、多様な光受容タンパク質です。 私たちは特に微生物が持つ光受容型の膜タンパク質である微生物型ロドプシンに着目し、先端的分光法を用いてその機能メカニズムの解明を目指しています。またその知見をもとに近年注目される光遺伝学などへの応用に向けた新規分子ツール開発に取り組んでいます。

井上研究室 研究紹介

 

微生物型ロドプシンの分子構造。光駆動型水素イオン(左)およびナトリウムイオンポンプ(右)

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様々な微生物型ロドプシンの水溶液試料。多様な色の違いは、発色団であるレチナール(一番左)がタンパク質内部に取り込まれ異なる波長の光を吸収することに対応する。

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光受容タンパク質の光反応を調べるためのレーザー分光システム

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光で多様な機能を発現する微生物型ロドプシン

メッセージ

「研究は、自分で努力して頑張って、いろいろ調べて、見たこともない壁を乗り越えていくもの。世界の誰も知らなかったことを解き明かすロマンがあります。

高校の時に一番面白かった化学を大学で専攻しました。生き物も好きで、生物の持つタンパク質を対象として、レーザーを使って物理化学的な観点から生体分子を調べたいと思っていたので、大学院ではその研究をされている先生の研究室を選びました。私の場合は調べる試料がタンパク質が中心なので、普通には購入することができません。それで、自分で大腸菌や酵母を使って、遺伝子操作技術で作らないといけない。調べる試料も自分で作って、また、それをちゃんと測れないといけない、両方が必要になります。 研究者の道を選んだのは、なんでこんな化学反応が起きるのか、なんでこんな生き物が生きているんだろうとか、メカニズムを調べて、わからないことを解き明かすことにすごくロマンのある職業だと思ったから。自分が納得するレベルのデータを出そう、世界のどこよりも生き物の持つ分子のメカニズムを理解するため、徹底的に考えるだけ考えて、これ以上ないというところまで突き詰めていこうという気持ちで研究を進めています。

物質系専攻を志す学生へ

生きるためのエネルギーを光から作る、色や形を光で見る、複雑な酵素反応を光で制御するなど、生き物の体の中では様々な光を使った機能を持つタンパク質が働いています。私たちはその分子メカニズムを先端的な分光学を用いて解明し、それをもとに優れた分子ツールを作ることを目指した研究を行っています。スタートして間もない研究室ですが、自然界の生き物が持つ、複雑で精緻な世界に興味がある人はぜひ一緒に研究をしませんか。

プロフィール

井上 圭一 准教授

井上 圭一 准教授

2002年 神戸大学理学部化学科卒業

2007年 京都大学大学院理学研究科化学専攻博士後期課程修了(博士(理学))

2007年 東京工業大学資源化学研究所特任助教

2012年 科学技術振興機構さきがけ研究員(兼任、「細胞構成」領域)

2016年 科学技術振興機構さきがけ研究員(兼任、「光極限」領域)

2008年 名古屋工業大学大学院工学研究科生命・応用化学専攻准教授

2017年 理化学研究所・革新知能統合研究センター客員研究員(兼任)

2018年 東京大学物性研究所准教授(現職)

学生の声

川﨑 佑真

川﨑 佑真 さん

井上研では日々活発に研究に関する議論が行われており、興味深いデータが得られたときにはスタッフメンバー全員が参加することもあり研究室全体で学生の研究をサポートしてくれます。研究内容についても最先端のものが多く、自分の研究が世界初の発見になるかもしれないというワクワク感を感じながら日々の研究を行うことができます。

また、外国人メンバーも在籍しており英語を使う機会にも恵まれているため英語力を向上させることもできます。


物質系専攻を志す学生へ

物性研究所を擁する柏キャンパスは、研究に取り組むうえでこの上ない環境だと感じます。是非、様々な分野の研究室がある物質系専攻で、皆さんの面白いと思う視点から物質科学に取り組んでみるのはいかがでしょうか。

研究室訪問

  • 04-7136-3230
  • 277-8561
  • 千葉県柏市柏の葉5-1-5
  • 東京大学大学院新領域創成科学研究科物質系専攻
  • 井上圭一准教授研究室
  • inoue@issp.u-tokyo.ac.jp