研究紹介

低温で電気抵抗がゼロになる超伝導という現象は、ミクロスコピックな世界を支配する量子力学がマクロスコピックな現象に現れる一例として非常に興味深く、一方で将来的な応用の面でも大きな期待が持たれています。超伝導など複雑な現象をミクロな電子構造の観点から解明する事は、物質科学における最も重要な課題の一つであるとともに、実社会においてさらなる応用を加速するためにも不可欠であると捉えられています。 角度分解光電子分光という実験手法を用いると、超伝導体など物質中の電子の運動量とエネルギーの分散関係(バンド構造)を直接観測することが出来ます。本研究室では、エネルギー分解能70μeV、測定最低温度1Kという世界最高性能を有するレーザー角度分解光電子分光装置を用いることによって、物質の非常に微細な電子構造を調べ、超伝導を始めとする様々な物性現象の機構解明を目指しています。 さらに、非常に短いパルスを発するフェムト秒レーザーをポンプ光、その高次高調波をプローブ光として用いると、非平衡状態におけるバンド構造の超高速な過渡特性も観測できるようになります。 本研究室では、レーザー開発の研究室と共同で超短パルス高次高調波レーザーを用いた時間分解光電子分光装置の開発・改良を進めて、ポンプ・プローブ時間分解光電子分光によって、光励起状態からの電子の緩和過程の直接観測、光誘起相転移に伴う電子状態の変化の直接観測等を行い、励起状態からの電子の緩和機構の解明、光誘起相転移の機構解明等を目指しています。

岡﨑研究室 研究紹介

 

高次高調波レーザーを用いた時間分解光電子分光装置の概略図

岡﨑研究室 研究紹介

 

高次高調波レーザー時間分解光電子分光で観測された励起子絶縁体Ta2NiSe5における光誘起絶縁体-金属転移 a,bはそれぞれ、光励起前、光励起後のスペクトル

メッセージ

研究に好奇心を持って取り組み、何にでも興味を示していくときっと天文学的な数の発見ができる。諦めない心が未来を作ります。

小学生の時、国際科学博覧会(つくば’85)が開催され、16年後の自分に届けられるポストカプセルに、大人になったら何になりたいか、将来の夢を書いたハガキを託しました。そんなことはすっかり忘れて、小学・中学は剣道に打ち込み、高校では相対性理論や素粒子論に興味が湧き、東京大学では物理学を専攻。 その時はまだ、自分が研究者になるとは思っていませんでした。けれど、大学院で出会った恩師との研究が面白く、博士課程までいってしまいました。ワクワクする気持ち、知的好奇心が研究の原動力になったのだと思います。これからはお世話になった恩師に恩返しがしたいし、若い研究者が研究を続けられる環境を整えてあげたいと思っています。 ポストカプセルから16年後、研究を続けていた私に手紙が届きました。そこには、「大人になったら学者になりたい」と書かれていました。子供の頃に描いていた夢が実現していた。小学生の自分には、未来が見えていたんですかね(笑)

物質系専攻を志す学生へ

研究をやる上で重要なのは「好奇心」「興味」を持つことです。自分の脳力では難しいと思っていたことでも、研究に興味を持って続けて行けば、ちゃんと答えてくれるんだということを体験して欲しい。諦めない心で研究に臨み、一緒に人類初の発見をしましょう。

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