研究紹介

■13 族元素の不思議な化学 BとAlは、正二十面体クラスターを形成する珍しい元素です。これらのクラスターが、固体中では中心原子の有無で共有結合性と金属結合性を切り替えることや、静電浮遊装置を用いて液体ホウ素が半導体であることを発見しました。さらに、新規クラスター分子の合成と分子軌道計算による物性予測、新規クラスター構造超伝導体の探索に取り組んでいます。

■準結晶の神秘 「準結晶」とは、5 回対称のペンロース格子などのように、周期性(並進対称性)を持たない特殊な構造の物質群です。本研究室では、BやAl などの正二十面体クラスターを含む新規3次元準結晶と、その類縁物質(近似結晶)の物性について研究し、半導体的な電気伝導を示す準結晶の発見とその応用を目指しています。

■新規熱電材料の探索 熱電材料とは、熱と電気を相互に変換し、冷却や発電に利用できる材料です。熱電特性はキャリア濃度や不純物、微細組織で劇的に変わるため、どれが有望な物質なのかわかりにくいという問題があります。 本研究室では準結晶や不整合化合物など多様な物質群の熱電特性をバンド計算と系統的な実験から調べ、RuGa2, FeGeγなどの新規熱電材料の発見に成功しました。さらに学融合の一環として、情報科学研究者と協力して過去の文献上の実験データのビッグデータ化に取り組み、機械学習による材料開発の加速を目指しています。

木村薫研究室 研究紹介

 

ボロン系とアルミ系正20面体クラスター固体の多重殻構造の比較アルミ系では、共有結合を持つボロン系で空になっているサイト(点線の円)に原子が存在し金属結合となっている

メッセージ

二十歳台に受けた感動は、科学においても一生の宝になります。

私が、その発見に感動を受け、現在まで研究を続けているのは「準結晶」です。これは、1984 年の最初の発見から27 年かかって、「結晶」、「アモルファス」と並ぶ固体構造の大きな概念として確立し、2011年のノーベル化学賞に輝きました。 その「準結晶」には「半導体」と「絶縁体」が、まだ見つかっていません。これらが存在するかどうかは、固体物理学の基本的な問題として残されています。 また、私たちが取り組んでいる高性能の「熱電変換材料」の開発は、エネルギー問題や環境問題の解決に貢献できるキーテクノロジーを生み出す可能性があります。この材料の有力な候補として、「半導体準結晶」を提案しています。

物質系専攻を志す学生へ

物質系専攻は、「物理学」、「化学」、「材料学」を融合させた新しい学問分野を構築しようとしています。新領域創成科学研究科には、さらにかけ離れた分野を融合させることを試みる仕掛けもあります。学部で、それぞれの専門分野を勉強してきた皆さんは、物質系専攻でより広い視野を身に着けて下さい。他の研究科では得られない、異分野に触れた経験の蓄積は、すぐに皆さんの修士論文や博士論文の研究に生かされるとは限りませんが、将来きっと、皆さんの独創的な発想に結び付くはずです。

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