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研究の背景

Research background

研究の背景

グローバル化している世界にあって、日本においても外国からの移住者が増加している。

 平成2年の「出入国管理及び難民認定法」の改正以来、日本在住の外国籍者数は約2倍に増加し約212万人にのぼる(法務省HP)。学校においては、平成11年から外国人児童生徒数は約8万人前後と変化していないが、特別支援学校に在籍する障害のある外国人児童生徒数は1,061 人と約3倍になった(文部科学省「学校基本調査」)。障害のある子どもとその関係者(保護者、教員など)は、障害を背景とした困難と、移住による環境変化、低い日本語能力などによって生じる困難を抱えている。しかしそのような困難に対する支援は確立されていないばかりか、具体的な支援方法の検討も十分に行われていないのが現状である。例えば、平成25年度から始まった文部科学省の「公立学校における帰国・外国人児童生徒に対するきめ細かな支援事業」では、日本語学級の設置や日本語指導者の配置・派遣、保護者面談時等の通訳の手配・派遣、日本語指導に必要な教材の提供、学校文書の翻訳など、外国人児童生徒の日本語指導と、資料翻訳・通訳による保護者支援が中心になっている。また、吉田ら(2006)の調査研究では、障害のある外国人児童生徒への教育的支援の実態とその課題が示されたが、具体的な支援方法は提案されていない。さらに幼稚園・小学校で障害のある外国人の子どもを受け入れる際にどのような支援をすればよいのかという行政レベルの指針もない。つまり、障害のある外国人児童生徒に対する支援システムが確立されていない。このように、障害のある外国人幼児児童生徒への支援システムを構築することは急務の課題である。この課題を解決するためには、支援システム構築に直接つながる系統的で包括的な支援プログラムを開発する必要がある。また教育の実情や文化が国によって違うため、抱える困難やその困難に対する捉え方なども国によって異なる可能性もあり、移住者の国籍別の検討が必要である。日本在住の中国人は約64万人(外国籍者の約 30%)であり、その数は年々増えている。
 本研究では、年々増加する中国国籍の移住者に焦点を当て、障害のある中国人幼児児童に対す る教育的支援を検討し、他の外国籍の障害幼児児童にも応用可能な支援システムの参考モデルを提案したい。